column‎ > ‎

「身の丈を知る」ということ

私が日頃洋服を選んだり、コーディネートをする際にひとつ気をつけていることがあります。
それは「身の丈を知る」という事です。この事は単純に「自分の身長、体重、体型を知る」というだけでは無く、趣味嗜好、自分の置かれた立場、経済面等様々な側面を表します。

ファッションに興味を持ち始めの頃は無我夢中で色々なモノを買ったり、コーディネートをしてみるものですが、段々自分のペースが掴めていきます。
当然ある程度年数を重ねる訳ですが、社会人としての経験を積むようになると、「人は見た目だけでは判断できないが、それなりに身なりで判断されることもある」という相反する要素があることが分かると思います。
(仕事でもプライベートでもそうですが、特に初対面の人と会う場合、見た目の印象は非常に重要な要素です。)
これはまだ成長段階である学生さんと、自分でお金を稼いでいる社会人との大きな違いです。

社会的に地位があり、仕事もよく出来、収入や資産が多い人の場合は、当然ながら高価な洋服や靴を買う事ができますし、その逆もまたしかりです。しかしながら、ファッションは「センス」の要素を含むものなので、単に収入が多い人が必ずしもお洒落とは限りません。
話をシンプルにする為に、ファッションに使えるお金=可処分所得とセンスの2つの要素で考えると、おおまかに以下の4つの組合せになります。

1.可処分所得が多く、ファッションセンスも持ち合わせている
2.可処分所得が多いが、ファッションセンスにはうとい。
3.可処分所得が少ないが、ファッションセンスは持ち合わせている
4.可処分所得が少なく、ファッションセンスにうとい。


もちろん最も良いのは「1.」の所得があり、センスも良い人です。
こういった人はお洒落な芸能人やスポーツ選手、資産家などに見られると思いますが、そこまで行かなくても多少なりとも多めに給料を貰っているサラリーマンでもこういう人はいます。
また、ファッションの観点から最も悪いのは「4.」の所得が無く、センスも疎い場合です。

実際には「1.」と「4.」までの間に明確な線引きがある訳ではありません。(例えば年収○○○万円以上等)
※例えば、ほぼ同じ程度の可処分所得を得ている人であっても、「平均的成人男性よりもややファッションが好きで、少々多く洋服にお金を使っている」人もいるでしょうし、「その他の趣味にお金を使う事が多いので、ファッションにはあまりお金を使っていない」人もいます。この場合、相対的に見ると前者の人のほうが「ファッションに関する可処分所得が多い」と言えます。


多くの人が、所得(=購入、保有できる洋服の数や質)とセンス(=経験など)のバランスの中でやりくりしている訳ですが、上の「1.~4.」を見て頂くと分かる通り、「所得 ≦ センス」の状態が良く見え、その逆が悪く見えるものです。
このバランスこそが「身の丈」だと私は考えています。
バランスの良い例、悪い例を以下に書きます。

《良い例》
 ・所得に余裕は無いが、安い服やセール品、古着を上手に組み合わせて着こなしを楽しんでいる。
 ・ボーナスが出てお金に余裕があるので、長く着れる(と自分が納得した)革のジャケットを購入した。
《悪い例》
 ・一点豪華主義と思い、大枚叩いて高いジャケットを買ったが、他に合わせる服が無くて困った。
 ・自分は高級ブランド物の服ばかり買って着ているのでお洒落なはずだと思う。
 (しかし実際には何が高級なのかをよく分かっていない。)



ファッションを「今の自分と合っているかどうか」を確認する際、このセンスと所得等を考慮した「身の丈」を考えると、「この服は今の自分にはまだ早い(もったいない)な」とか、「この服はちょっと自分に似合わない」「この服は値段の割りに良く出来ていて、自分に合っている」等といった選別ができるようになります。

こういった考え方はファッションに限らず、趣味嗜好品全般に言える事ですが、こういった発想は「大人ならでは」では無いかと私は考えています。