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素材や加工によるカラーへの影響-2

(2)洗い加工

 
これは皆さんご存知かと思います。左のジーンズの写真は最も一般的な洗い加工である「ストーンウォッシュ」の例です。左が加工済、右は未加工のジーンズ。
 
ジーンズを構成するブルーデニムの藍色の経糸が中心まで染まっていない為、洗い加工により綺麗な淡いブルーになります。
 
尚、ストーンウォッシュの「ストーン」とは軽石の事で、薬品を含ませた軽石を入れた大きなドラムに入れるウォッシュ加工なので「ストーンウォッシュ」と呼ばれます。
 
元々ウォッシュ加工は「古着のような着古したテイストを出す」「生地を柔らかくして着易くする」等が目的で、カジュアルウェアではブルージーンズ以外でも頻繁にウォッシュ加工が使われます。
 
左はブラックジーンズをウォッシュ加工したもの、右はポリウレタンコーディングの綿ジャケットの表面をウォッシュ加工したもの。
どちらも黒というより「チャコールグレー」になっています。
 
また、この他にも、赤やオレンジなどはっきりとした色の服も、ウォッシュ加工でトーンの落ちた柔らかい色にする事ができます。アメカジ系のネルシャツなどで良く使われるテクニックです。


(3)番外編-1 洗い加工の効果その1

 
上左の写真はどちらもやや細みのブルージーンズですが、Aは未加工、Bはウォッシュ加工をしているものです。最近のウォッシュ加工は非常に凝っていますが、特徴のひとつとして「太腿部分を淡く色落ちさせている」事が挙げられます。「実際に着古したような加工を目指しているのだから当然では?」とお思いの方が多いと思いますが、実はもうひとつ加工による工夫がされています。
 
上右の楕円形のA、Bはどちらも同じ色、同じ形、大きさのものです。どちらが横幅が広く見えますか?
おそらくAのほうが広く見えるのではないでしょうか。これは女性のファンデーションと同じテクニックで、手前をウォッシュ加工で明るく、周囲を暗くコントラストをつける事で立体感を強調しているのです。
元々女性向けのジーンズで使われ始めたテクニックですが、最近ではメンズのウォッシュ加工ジーンズでもこの手法が取り入れられています。これも「色がなせるワザ」のひとつですね。
 

(4)番外編-2 洗い加工の効果その2

最近のジーンズは洗い加工も手間の掛かる加工をしているものが増えました。
左上は従来からある「ヒゲ加工」ですが、最近はさらに「シワ&ヒゲ加工(左下)」となったり、バックポケット部分も「シワ&ヒゲ&フチクラッシュ加工(右上)」と複雑な組合せをしています。
 
右下はご存知の「クラッシュ加工」ですが、こちらも単に穴を開けるのでは無く、上記のヒゲ加工との組み合わせや、穴あけ後のウォッシュ加工、染め加工などどんどん新しい「ワザ」が生まれています。
 
こういった加工のメリットはひとえに「ワイルドさの演出」となるでしょう。先記の生地の織り方が複雑なほうが表情が豊かになるのと同じで、いくつかの加工でジーンズに表情を持たせているのです。
また、要所要所の「シワ加工」は番外編-1と同様、「シワによる立体感」を狙っている部分でもあります。

4.さいごに

同じ黒でも「シャープな黒」「ワイルドな黒」「暖かい黒」「リラックスした黒」など様々な表現があります。こういったテイストの違いを作るのが、ここで紹介したような「素材」「生地、織り」「加工」などのテクニックです。
私自身、黒や白といった無彩色が好きなほうなので、ついつい単一なカラーコーディネートになりがちな時があります。その時に、ここで紹介したような「違い」によってカラーコーディネートを工夫するようにしています。
皆さんの中でも「ついつい単調なカラーコーディネートになりがち」な人や、「どうも同じ系統の色の服を買うことが多い」人は、参考にしてみて下さい。