秋冬シーズンは防寒の意味もあって重ね着をする機会が多い事と思います。
一時期は「レイヤード・ルック又はコーディネート」と呼ばれる、積極的に重ね着をする着こなしが流行った頃もありました。 現在においては流行というよりも、むしろ「普通の着方」としてすっかり溶け込みあたりまえの着こなしのひとつになっています。
「トップス+ボトムス」の組み合わせが「縦の位置関係」なのに対して、重ね着は「横の位置関係」になります。 本来、洋服はこの「縦と横」が合って初めてコーディネートとして完成するものです。
しかしながら、「重ね着」というものはある意味「当たり前」過ぎるものなので、詳しく語られることが少ないのが現状です。そこで、このコーナーでは主にシルエットを中心に「重ね着(レイヤード)」の基礎知識とテクニックについて紹介します。
1.はじめに
ひとえに「重ね着」と言っても色々な見方がありますね。例えば左の写真も重ね着によるコーディネートです。 ※左の写真は過去のSISLEY(Benetton)のコレクションの重ね着の例です。こんな着方が自由にできる方はこれから先の文章を読む必要は無いでしょう。
もっとベーシックな内容に焦点を当てて紹介していますので、まずはご了承下さい。
2.重ね着の基本
まずは重ね着についての基礎知識です。おそらくほとんどの皆さんがご存知だと思いますが、復習としてお読み下さい。
(1)重ね着をする順序について
説明するまでもないと言われそうですが、重ね着をする順序は基本的に左図の通りで、左のアウターが外、右のインナーが中に来るのが基本です(ここでは肌着は記載していませんので、ご注意を)。 例えば、ニットの上にシャツは着ませんしジャケットの上にカット&ソーを着る事もありません。
最近は「シャツとJKT」や「コートとJKT」の区別がつきにくい服もありますが、そういう「分かりにくい」服は洋服を着慣れてから手を出すべきです。 ベーシックな服はそれほど分かりにくさはありませんので、この点で迷う事はほとんど無いでしょう。
(2)重ね着と寸法の関係
重ね着をすると温かくなりますよね。それは防風効果であったり、衣服を重ねることによって衣服内、衣服間に空気が溜まる保温効果であったりします。 しかし、ここではこういった機能面を追求すると、見た目がおろそかになる場合があります。それは寸法の変化です。
左に重ね着の概念図を書きました。 A及びBは3枚重ね、A'及びB'は5枚重ねの状態を指します。AとA'、BとB'をそれぞれ見ると、A'、B'の方が寸法が広いのが分かります。(重ねると厚みが増しますから。)
ところがここが問題なのです。
重ね着をすると「温かくはなるが、シルエットがルーズになる」という事です。やや細めの人もあまり細めには見えなくなり、メリハリのあるボディラインの人もそのラインが隠れてルーズになります。(女性ではそういった点を効果的に使い、ボディラインのマイナスを隠すファッションを着る場合もあります。)
よって、重ね着をする場合、あまり重ねすぎるとルーズになるという事を頭に入れておく必要があります。
個人的には、肌着を除き、重ね着はせいぜい「アウター+ニット等のミドル+インナー(シャツ等)」の3枚ぐらいが限界ではないかと思っています。
寒さ対策としては、昨今人気のユニクロの「ヒートテック」のような保温性の高いアンダーウェアや、マフラー、手袋等の小物でのフォローなどでも可能なので、できるだけアイテム数は少なめにするよう心掛けています。
|