3.重ね着をする上でのポイント
ここからは実際に重ね着をする上におけるテクニックや、うまくコーディネートをする為のコツを紹介していきます。ただし、先にも書いた通り、防寒機能についてはあまり考慮していませんので予めご了承下さい。
(1)着丈の関係について
先程「重ね着の順序が決まっている」と書きました。それは個々のアイテムの生い立ちや作りによる所もあるのですが、「着丈の違い」にも大きく影響されます。
左に洋服の主な着丈のポイントとなる場所を書きました。
A:腰丈
Tシャツ、Gジャン、ドリズラー、スウェット、ニット等
B:ヒップ丈
テーラードJKT、ウィンドブレーカー、マウンテンパーカー、ダウンJKT等
C:B以上。主にコート関係
ここで注意して欲しいのは、「着丈が短いものが中、長いものが外」であるという事です。つまり、組み合わせの基本は
「インナー~A<B<C~アウター」
なのです。これを崩すとコーディネートは、ほぼ失敗します。
左にモノを重ねる場合の概念図を書きました。
Aは大きさが異なるモノ同士が順序よく並んでいる状態で、違和感が無い重なり方です。対してBは大きさが異なるモノ同士がバラバラで、見た目に違和感を感じてしまいます。
この考え方を洋服にもあてはめると、この着方に違和感があるのかどうかがわかると思います。以下にその例を示します。
「違和感の無い着こなし」
これはGジャンとジーンズの組み合わせのインナーにカット&ソーを合わせた場合です。
Gジャンもカット&ソーも上の「着丈A:腰丈」なのですが、ややカット&ソーの方が長く、「X」の分だけ見えています。
ただし、この場合にはXはごく短め(せいぜい5cm以下程度)なので、問題はありません。また、時にはワザと「ちょっとだけ見せる」というワザを駆使しているツワモノもいます。
「違和感のある着こなし」
同じくGジャンとジーンズの組み合わせのインナーにシャツを合わせた場合です。
シャツの着丈は基本的にはパンツの中に入れることを前提にデザインされているので、これを外に出してしまうと、「X」の寸法が5cmどころか10cm以上にもなる場合があります。いわゆる「見た目B」のパターンですね。
この場合、合わせるシャツの着丈がアロハシャツのように短めであれば良いのですが、そうで無い場合には、Gジャンのような着丈が短いアイテムと合わせる場合には、パンツの中にタックインするしかありません。(最もそれがシャツの基本的な着方ですが…。)
どうしてもインナーにシャツを使い、且つシャツを外に出したい場合には、テーラードJKTやコートのようなさらに着丈が長いものをアウターに持ってくるのが常套手段です。また、元々外だしを前提にした着丈が短いシャツを選ぶ必要があります。
(2)シルエット、ディティールについて
「重ね着をするとシルエットがルーズになる」事について触れましたが、ある程度はやむを得ないものの、できるだけシルエットはコントロールしたいものです。そこで、ここでは重ね着をする上でのシルエットコントロールのポイントをいくつか書きます。
左の写真、AとBではどちらがシャープな印象でしょうか?答えはもちろんAですね。
AとBのシルエットを分かり易くグレーの模式化しましたが、その違いは「肩のライン」と「ウエストの位置」です。
特にアウターにおいて、この2つのポイントが分かり易いかどうかでシルエットのシャープさが断然異なってきます。以下にその事例を示します。
「肩のラインの例」
左はどちらも過去のユニクロのアイテムです。
(同じ会社の製品でもこれだけ異なるという例。)
左は肩がラグランスリーブ、袖と裾がシャーリング付きの絞込みタイプ。全体的にゆったりめのシルエットです。
対して右はテーラードJKTのような肩のライン、袖や裾は絞込みが無いタイプ。
既にお分かりだと思いますが、右のアイテムの方が肩のラインがかっちり決まっていてシャープな印象になるという事ですね。
ちなみに袖も腕周りがゆったりしていて袖で絞るタイプよりも、袖がストレートカフのすっきりした右のタイプの方がシャープな印象を与えます。
「ウエストの例」
今度はウエスト周りのラインの例です。
どちらも服自体のシルエットはずん胴なのですが、右のJKTはベルトが付いていてウエストを絞り込む事ができます。これにより着丈が長いながらもウエストの位置がはっきりしている為ウエストが細く見えるようになります。
女性のアウターではよく背中だけこのようにベルトラインをつけたJKTやコートがありますが、それもこの腰高効果を狙ったものです。