(1)作り方
糸は製造方法から「紡績糸」と「長繊維糸」に分けられます。
「紡績糸(スパン糸)」
綿、麻や毛のような天然繊維を糸にする方法。短繊維を集めた「わた」に撚り(より)を掛ける事で糸を作る。
カジュアルファッション衣料に使われる糸としては最も一般的。
通常、1~2本程度の糸を撚り合わせる単糸、双糸が主流だが、太い糸を作る場合、3~5本以上の撚りもある。
「長繊維糸(フィラメント糸)」
絹や化学繊維のような長い繊維(フィラメント)でなければできない糸。
ほとんど撚りが無く、フィラメントを数十本束ねる事で1本の糸を生成する。
(2)撚りについて
主にスパン糸での事ですが、撚りの方法は以下の2種類があります。
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単糸を撚る場合の方法。 |
糸を複数束ねて撚るための方法。 双糸を作る際に用いられる。 |
また、撚りの回数によって糸の特性が変わるので、用途によって使い分けられます。
・撚りが多いと繊維にコシが出て強い「強撚糸」となる。
・撚りが甘いものはニット用、手芸用等に用いられる。
(3)糸の番手
糸には「番手」というものがありますが、これは「基準となる重さで、どれだけ長い糸ができるか」という事。
具体的には「1ポンド(約454g)あたりの糸の長さが1ヤード(約768m)=1番手」と言われる。
長さが2ヤードになれば「2番手」、3ヤードになれば「3番手」となります。
番手の数 |
太さ |
用途 |
番手の数が少ない糸 |
太い糸となる |
厚地織用の糸、太目の縫製糸 |
番手の数が多い糸 |
細い糸となる |
高級なシャツ向け生地用の糸 |
細い糸は切れやすい華奢なものになりがちですが、実際には「超長綿」等の繊維長が長いものから糸が作られるので、「細くて、強度もある糸」となり、高級な糸となります。
故に、「高番手の生地を使ったシャツは高級なシャツ」となるのです。
(4)「超長綿」について
「超長綿」という言葉は、メンズファッションでもしばしば聞かれる事があると思います。
これは「摘み採った繊維の長さが長い綿」という意味で、平均35mm以上(普通の綿糸は20~30mm程度まで)のものとされているようです。他の綿と比べ価格は高めですが、表面に艶があり、シルクのようにスムーズな感触が得られる事から、珍重されています。
西インド諸島の「海島綿(シー・アイランド・コットン)」、エジプト綿の「ギザ・コットン」、ペルーの「ピマ・コットン」等が有名。
上:「SCHIATTI」のシャツに使われている「ギザ・コットン」の例。
(5)ムラ糸について
ジーンズの「縦落ち」の話題となる時に聞かれる言葉に「ムラ糸」というものがあります。
上のイラストは糸の模式図ですが、上が均一な太さの「レギュラー糸」で、下が太さが均一では無い、「ムラ糸」です。
本来、糸はできるだけ同じ太さで均一であるほうが「良い糸」なのですが、昔は、紡績技術が未発達であった為、糸の太さにムラがあったのですが、その「ムラ」がLevi's501XX等の、ヴィンテージジーンズの「縦落ちのアタリ」に影響をしていました。
そこで、その「未熟だった頃の糸を再現」する為に作られたのが、現在の「ムラ糸」なのです。
※今ではさらに進んだ「ストラクチャー糸」といったものも開発されています。
今ではジーンズのみならず、ウォッシュ加工等を施し、カジュアル感を演出するウェアに幅広く使われるようになっています。