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靴とパンツのレングスについて-1

1.はじめに

実際にコーディネートをする際、靴と服の関係で大きな要素となるのが、「レングス=裾丈」です。
よく雑誌で「レングスは○○が今のトレンド」とか、インターネットで「どのくらいの長さが良いのか?」といった質問があったりするのを見かけた事がある方も多いでしょう。
そこで、靴関係の第3回目では、その「靴とパンツのレングスの関係」について、他とはちょっと違った観点で説明したいと思います。
 

2.裾丈の決め方

これは店頭でジーンズ等を購入し、実際に裾直しをする場合によく行う事ですが、復習の為に一応書いておきます。

「Step.1」腰位置を決める。

裾の寸法を決める場合、当然ながらどこかを基準にしなければなりません。
そこで、パンツと自分の体の位置関係を腰周りで決定します。
一般的な股上のパンツの場合には、ベルトラインが腰骨程度~腰骨より高めなので、腰骨との関係でベルトラインを決めて、そこをパンツの固定位置とします。ローライズの場合はベルトラインが腰骨よりも低い場合が多い為、股下(股間部分)あたりが丁度良くなるように位置を決めます。(ベルトラインと腰骨の位置の関係は こちらの記事を参照して下さい。)

この場合、注意しなければならないのが、「姿勢の変化」です。
通常裾の長さは左にあるように真っ直ぐ立った状態で決めますが、実際に歩いたり座ったりすると微妙に位置がずれたりします。そこで、腰位置を決める場合、立った状態で仮決めをした後、その場で屈伸をしたり、ちょっと歩いてみる等して動きを加え、再度腰位置を見ます。多くはこの動きにより下に位置がずれると思いますが、実はそこがいつもパンツが「いる場所」だったりします。
ベルトをする場合には、ベルトによって位置を固定できるので、できるだけベルトをした状態で上記のような確認をして位置を決めます。
 
「Step.2」裾丈を決める。

「Step.1」で腰位置が確定したら、次に裾の長さを決めます。
裾の長さは履いているパンツや合わせる靴の形、履き方、トレンド等、様々な要因で変化しますが、流行やスタイルに関係無く、最も一般的な寸法は「裾の前側に1クッションの皺がはいる程度」と言われます。
以上が一般的な裾直しのステップですが、実のところ、様々な要因が裾の寸法、靴との関係に影響を及ぼします。
そこで、ここでは、他ではあまり語られる事が少なく、且つ重要と思われる要素を書きたいと重います。
 

3.影響その1:パンツのシルエットとフィットによる影響

左の図は大雑把に書いた膝関節の構造です。
真っ直ぐに立った状態に対して、膝を曲げると「X」の分だけパンツの前部分が引っ張られる事になります。
実際には右図の「Y=足の付け根」と「Z=膝」の2箇所の関節の影響をパンツは受け、「Y=裾の後ろ」「Z=裾の前」が各々引っ張られる事で、座った状態では裾が全体的に上にずれる事になります。

しかしながら、この「ずれ」が、パンツのシルエットと足の形の関係=パンツのフィットによって変わってしまいます。
 
 
 
左図の(A)はタイトめなジャストフィットパンツ、(B)はややゆったりめでフィットにゆとりがあるパンツです。
各写真の点線部分が上の「Y~Z」間にあたる太腿部分となります。

(A)の場合、太腿部分がタイトにフィットしているので、パンツの上下の動きが大きく妨げられる事になります。(太腿部で固定されている。)その為、Y、Zの各関節の動きの影響が少なくなり、立ち姿勢と座った状態での変化も減ります。
対して(B)はフィットにゆとりがある為、Y、Zの各関節の動きによる位置の変化を大きく受け、結果立ち姿勢と座り状態での裾の変化が大きくなります。