4.影響その2:素材による影響
同じようなシルエットのジーンズでも、素材によって違う場合もあります。特に前ページの(A)に近い、ジャストフィットのパンツでは、素材のよる違いがはっきりと見られます。
(C)はストレートジーンズ、(D)はウールパンツ、「-1」は立ち姿勢、「-2」は椅子に座った状態での裾部分です。
(C)のジーンズは厚手の綾織面素材で、比較的伸縮性に優れ、しかも生地がざっくりしているので、太腿部分での保持性が高くなります。
その為、ウールパンツと比べると、裾(時に前部分)の上がりが少ないのが分かります。
反対に(D)は座った状態「-2」でかなり裾が上がっていて、靴下がはっきり見えるぐらいになっています。
実は(D)はスーツのパンツで、太腿部の裏側にキュプラのインナーが付いていて、パンツが足にまとわり付きにくい仕様になっている為、なおさら「滑り」が良くなっているのです。
ジャストフィットのパンツにおける素材の影響を纏めると以下のようになります。
(1)影響の少ない素材
ざっくりとして、素肌に対して抵抗感がある生地、ストレッチ性の高い生地
(2)影響の多い生地」
すべすべして素肌に対して引っかかりの少ない生地、伸縮性の少ない生地
以上のように、「パンツのシルエット」と「素材」が、実はレングスに大きく影響を与える事がお分かり頂けたと思いますが、実際に個人個人にどのように影響が出るかは、皆さんが実際に履いてみなければ分かりません。同じLevi's501でも、寸法が2サイズ違うと太腿部のフィットが変わりる為、膝を曲げた時の裾の上がり寸法が変わるのと同じです。
自分が持っている、あるいは買おうとしているパンツが、自分の体形とどんな関係にあり、実際の生活の中の動きで、どのように裾の寸法が変化するのかが分かれば、裾の長さを決める際、大いに役立ちます。
5.靴とパンツの組み合わせのテクニック
ここでは、先記の内容を踏まえて、靴とパンツを組み合わせる際のテクニック的なものを記します。
「裾の広いパンツ」
ブーツカットやバギーのように、裾の幅が広いパンツは、裾が狭いパンツよりも長めにカットするのは皆さんご存知かと思います。
特にブーツカットは、太腿部分がフィットしている上に、裾が広くなっている為、最も股下寸法を長くできるパンツなのです。
左の(E)の写真はブーツカットジーンズで、(A)と同じ靴を履いています。(A)と比べると、こちらの方が、ややレングスが長くなっており、立ち姿勢「-1」と座り状態「-2」での裾位置の違いも少ないのが分かります。
ブーツカットが脚長に見える理由は「太腿のフィットによるパンツの位置のずれの少なさ」と「裾の幅広さ」によって、股下寸法を長く取れるからなのです。(もちろん、全体のシルエットの綺麗さもあります。)
また、見ての通り、靴が見える面積が「少ない状態で一定」である為、ローカットとハイカットの違いが見えにくいのも特徴です。ですから、「ローカットだけど、ブーツと同じようにややワイルド感を出したい」といった場合にも、この組み合わせは有効になります。
「裾丈の短いパンツとブーツ」
このパンツは(D)で紹介したものです。細身のウールパンツは立ち姿勢でシルエットを綺麗に見せる為に、ぎりぎり靴に当たる程度の短い丈で合わせるのはよくある事です。(ウールが柔らかいドレープしやすい素材である為)しかし、カジュアルシーンにおいては、あまり裾丈は長くしないケースが多く、違和感がある場合があります。
そこで、裾の短さを逆手に取って、写真にあるようにブーツを合わせるのが良い方法です。ブーツは(E)のような場合ではほとんどローカットと同じ面積しか露出しませんが、(F)のように裾が上がりやすいパンツの場合、逆によく見え、ブーツのシルエットが活きる事となります。
これを発展させて、「わざと裾の寸法を短くしたり、パンツをロールアップさせてブーツを見せる」といったテクニックを使う人も見られます。
6.さいごに
ここでは、靴を「全体のシルエットのひとつ」と考え、パンツと靴が綺麗に繋がる事を前提に書きました。逆に言えば、靴は合わせるパンツによって活きたり、死んだりするとも言えます。
靴の長さや寸法は、購入後に変更する事ができません。そこで修正ができるパンツ側のレングスを靴を考慮した長さにする事で、トータルバランスが良くなり靴も映えるというお話でした。