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JIS規格を元にした洋服のサイズ表記と選択のしかた

1.JIS規格

洋服のサイズって知ってますか?知ってますよね。「S」「M」「L」という表記です。それって誰が決めてるのでしょうか?
 
「JIS」(日本工業規格)というのを聞いた事があると思いますが、(JIS配列キーボードのJISです)実はこれで決められています。決めたのは「通商産業省」でいわばお役所です。
※詳細は「成人男子の衣料サイズ(JISL4004)」と言います。(詳しくはこちらをご覧下さい。)
 
国は国民生活や産業をスムーズに運営する為に、一般人の知らないところで色々と管理をしています。洋服も同じで、今回のサイズ表記から、洗濯表記などなど、様々な決まり事があり、それを守って初めて洋服は世に出ます。(逆に、アパレルメーカーはJIS規格を守らなければ、「衣類」として商品を販売できません。)
 
洋服のサイズについては、「衣料品を購入する際に、自分の体にあったものを選ぶ目安となる」事を目的として定められていますので、サイズを選ぶ際にはこの「JISL4004」を知っていて損はありません。
ここではJIS規格を元に「上着(ジャケットやシャツなど)のサイズ」を考えてみます。
 

2.メンズウェアのサイズ表記と寸法

メンズウェアは平成8年に従来のS、M、L表記から、SA、MA、LAなどの表記に変わりました。これが左の図です。

なんでも「近年、日本人の体格の向上・変化は著しく、特に20代の若い人達を中心に体格の大きな変化が現れており、昭和55年に制定されたJISで規定しているサイズに該当しない成人男子が比較的多くなってきた」事が理由だそうです。うらやましい限りです。
 
ちなみにこの表記はスーツ等の厳密なフィットを要求しない服向けの寸法だそうで、スーツのYA4とかAB5などのAとかYとは関係ありません。(スーツは「フィット性を必要とする服」なので表記が細かいのです。)SML以外の各記号の意味は「Y=痩せ型」「B=太め」です。

実際にはSA→Sと表記しているメーカーも多いようですので、ここではSA=Sとして書いていきます。
(尚、ユニクロは今でもSML表記です。)
上からSA、MA、LAのみをピックアップしたのが左の図です。
JISではLY(痩せた人向けL)とかMB(太め向けM)とかの規定がありますが、多くのアパレルブランドはそこまで細かくカジュアルな服を作りません。せいぜいS、M、L、LLぐらいのものです。(Sサイズすら無いブランドも多い)
そこで、ここではSA、MA、LAのみをピックアップしました。
各寸法は「身長」「胸囲」の2要素から決めています。実際の寸法は以下の通り。

表記

身長 胸囲
SA 155~165 80~88
MA 165~175 88~96
LA 175~185 96~104
 

3.各サイズと実際のフィットについて

JISの決めた規格が分かったところで、実際のフィッティングを考えましょう。
上記の寸法内に収まっていればいいのですが、それから外れていたらどうなるでしょう?
 
 
「例1:身長170cm、胸囲85cmの人の場合」
このぐらいの背丈の人はだいたいMサイズを購入すると思いますが、着てみるとちょっとだぼっとした感じになります。
「例2:身長170cm、胸囲100cmの人の場合」
こういった体格の人はかなりマッチョな人です。
Mサイズを着てみると、ピチピチになると思います。
結果Lサイズを買うと今度は着丈が長すぎたりします。
 
 

 
 
 
 
上記の例をもっと細かく言うとこうなります。
各サイズのBOXに入らない人は大きく2つの傾向にあります。
 
(1)痩せ型:身長に比べ胸囲が狭い人
この人はブルーの人です。
右にシフトすると幅がルーズめな着方、下に行くと着丈が短めな着方です。
(2)がっちり型:身長に比べ胸囲が広い人
この人はオレンジの人です。
上に行くと着丈が長め、左に行くと横幅がタイトめな着方になります。
 
 
 

4.フィットの許容範囲

先の「の人」「の人」の例にある通り、同じ身長の人でもJISが決めた寸法からちょっと外れただけでフィット感や着方の違いが出てきます。
残念な事に、世の中がこういう決まりでモノを作っているので、著しく寸法が合わない場合は、意図した着こなしができない場合が出てきます。そこで考えたのが以下のラインです。

これは「既成の服でそれなりにおしゃれに着る為の体型」を前提としたものです。
各BOXの頂点を結んだ2本のライン内に自分の体型が収まっていれば、だいたい普通の着こなしができるはずです。
しかし、これを大幅に外すと(例えば身長165cmで胸囲が110cmとか)普通の服を普通に着こなすのは難しくなるでしょう。

お金を掛けて多少の修正を行うか、本来の着こなしじゃない着方を余儀なくされる事になります。(ちょっと丈が長すぎとか幅がありすぎとか)
※逆に、この寸法を分かっていると、「あえてルーズな着こなし」とか、「あえてタイトな着こなし」なども考える事ができます。
 

5.さいごに

実際の洋服では、JIS規格の範囲内でも「ゆったりめ」「タイトめ」な作りを各々のメーカー、ブランドが作っていますから必ずしも当てはまるものではありません。でも、オーソドックスな服(ボタンダウンシャツとか、トレーナーなど)の場合は比較的JIS規格に準じている場合が多く、ある程度は参考になると思います。
 
多くの洋服は工業製品ですから、より多くの人に受け入れられる服をメーカーは作ります。
それは寸法も同じ事で、よっぽどこだわりのあるデザイナーズブランドじゃない限り、「世の中的に多そうな体型」を元に寸法、カッティングを決めています。だから、着る側のこちらも、
 
「安く、且つきちんと服を着こなすには体型管理も大事」
 
と言うことです。それにちょっとだけ知識を加えると、さらに洋服の買い方や着こなしを工夫できると思います。
 
是非一度、自分の体型と身の回りの服のサイズを見てみて下さい。
また、あえていつもと違うサイズ、フィットの服を着てみると以外にしっくりくる場合があります。
(特にいつもはMサイズだと思っている人が実はSサイズがジャストだったと言う事がよくあります。)
自分のジャストサイズを把握するのはとても重要な事です。
 
洋服はできるだけ「試着」しましょう。過去に買った服の色違い等ならいいのですが、同じメーカーの似たような服でも若干のデザインや素材の違いでフィット感が平気で違ったりします。(特に素材の違いは伸縮性などの影響を受けます。ストレッチ要素のある素材や、生地の厚みにはご注意を。)
サイズやフィットが自分に合わない服の購入は無駄遣い以外の何者でもありません。