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ジーンズのシルエット、フィッティングについて-4

4.太腿以下のシルエットについて

(1)脚部の形について

 
脚のシルエットについて触れるにあたり、覚えておいて頂きたいのが「脚の形」です。といっても足先では無く、「太腿」と「ふくらはぎ」の事です。
自分の体を見ればすぐに分かりますが、実は脚は不均一な断面をしています。その中でもパンツのフィットに関係するのが「太腿」と「ふくらはぎ」なのです。
太腿は前後に長い縦長をしています。ふくらはぎは太腿に比べると前後と横の違いは少なく、太腿よりも細いものです。
上の写真のジーンズは501-01ですが、白い→にある通り、太腿部が太く、ふくらはぎ部は細くなっています。
実はこの形が実際に履いたときにはまっすぐに見える形なのです。このスタイルはトラウザースでは古くからありましたが、ジーンズでは60年代あたりから一般的になったカッティングです。
 

(2)脚のシルエットについて

上記のように、現代の「ストレートジーンズ」の多くは多少裾に向かってテーパードしているものがほとんどです。ここの4つのジーンズを紹介します。(左からA,B,C,Dの順)
 
  • A:501-01 ややテーパードなストレート
  • B:501XX 太さの変化の少ないパイプドステムストレート
  • C:517-02 膝をやや絞っているがその後フレアするブーツカット
  • D:CHIPIE PUNCH-UP 典型的なバギーシルエット
「A→C」は、裾が「ストレート⇔フレア」に見える順番です。501XXのような真っ直ぐなシルエットはたとえストレートでも実際に履くとややフレア気味に見えるものです。それは(1)にあった「ふくらはぎの細さ」のせいです。
真っ直ぐなストレートはふくらはぎの部分がいつも「遊んでいる」ので広がって見えやすく、結果フレアっぽくなるのです。
最近ではこの効果を狙ってわざと真っ直ぐなストレートを作っているブランドもあります。

ベルトライン以外、まったくフィットさせない「バギーフィット」「ルーズフィット」のジーンズ(写真「D」)は、そもそも「フィットさせない事で得られるリラックス感」が目的なので、(スーツの2ブリーツパンツと同じ発想)ここで書いているフィットの話はあまり役には立ちません。
バギーフィットのジーンズの場合も、ややテーパードなものからストンと落ちたまっすぐなストレートまでいろいろあります。

ちなみにバギージーンズの生い立ちですが、きっかけは「2.腰まわりの形について~(2)痩せている人の場合~ウエストを上げてベルトで締める。」にあるようです。

元々ヨーロッパで生まれたらしいのですが、スーツに着慣れたヨーロッパ人が、ジーンズをもっと着慣れたスーツパンツのように楽に履けないものかと考えて生まれたシルエットだと聞いたことがあります。
初期のバギーは古着の501XXのHip部にダーツを入れたものから始まり、やがて全体のカッティングで工夫するようになったようです。いまでも女性用で股上の深いジーンズではHip部のポケット上にダーツが入っているものがめずらしくありません。
 

5.ローライズパンツのメリット

女性では既に定番化しているローライズ・パンツ。ここ数年、メンズでもジーンズを中心に定番になりつつあります。「ローライズ」とは股上が浅いパンツの事ですが、一般的にはこんな内容が人気の理由だと言われています。
(1)スタイルが良く見えるから。
(2)ウエストを圧迫しないので、履くのが楽。(特に着席時など)
(2)はすぐに分かると思いますが、(1)の「スタイルが良く見える」とはどういう事でしょうか?
以外に分かりやすいのが、お尻=Hip部分の見え方なのです。
 
 
 
左の図をご覧下さい。同じ体形の男性のHip部です。
①が股上が深めのパンツ、②が股上が浅めのパンツを履いていると想定し、各々パンツ部分を青い半透明色で示しました。
 
①と②を比較すると、①では「お尻はAである」と見え、②では「お尻はA'である」と見えます。
実際の当人の体形は変わらないのですが、パンツで決められる胴と腰の境目位置が変わる事で、「小尻」に見えます。
 
人間の体で腰位置を明確に表しているのは腰骨です。お尻はなだらかなカーブを描いているので、「どこまでが背中か、どこからがお尻か」ははっきりしていません。そこで、パンツのベルトラインを腰骨位置前後まで落として、視覚効果を狙ったのがローライズ・パンツなのです。
 
比較的Hip部分が大きめな女性ではこの効果が目立って現れる為、女性に人気が出た訳ですね。女性程では無いにしろ、男性でもある程度「小尻」効果を発揮する事で、腰周りをシャープに見せる事ができるのです。
皆さんも、もし手持ちにローライズ・パンツがありましたら、大きな鏡で股上が深いパンツとの見え方を比較して見るとおもしろいでしょう。
※普通の股上のパンツを「腰履き」するのは、単にベルト位置を下げるだけで、股下も短くなる上、「A」の長さも変わらないので、「小尻」効果は期待できません。よって、単なる「腰履き」と「ローライズパンツの腰履き」は明確に異なります。
 
尚、ローライズ・パンツ着用にはいくつか注意をすべき点がいくつかあります。
  • 写真にもある通り、下着が見えやすい。
  • 腰周りが隠れてしまう服を着ては、意味が無い。(着丈が長いシャツなど)
  • 積極的に腰周りを見せるので、合わせるベルトにもある程度の気遣いが必要。
最近はさらにシルエットが改良され、前股上は浅め、後ろ股上は普通といったカッティングのパンツもありますし、ジーンズ以外のパンツでも男性向けローライズパンツが増えてきました。いろいろなパンツを店頭で試着して好みのシルエットを探してみてください。