1.はじめに
「テーラード・スーツ」は間違いなくメンズファッションの代表的な洋服です。
これは別に「仕事で着るから」等では無く、元々男の洋服の中で一番良いとされる位置にある為、逆にビジネスで着ることに適しているからです。つまりは「相手に失礼の無い服」「真剣勝負の服」なのですね。
それに比べ、カジュアルは別段勝負の時間では無いので、現在OFFでスーツを着る事はほとんどありません。冠婚葬祭も「儀式」だから着ているものであるし、パーティでのスーツ着用も「社交の場」という勝負ドコロであるから着ているものです。
では、勝負ドコロ以外でスーツを着てはいけないのかというとそんなことはありません。むしろ他の洋服に比べ高価な服であるスーツをほとんど仕事でしか着れないという日本の風潮を残念に思います。
しかしながら、簡単に「今仕事に着ているスーツをオフタイムでも着ましょう」という訳にはいきません。
理由は、現代の多くのスーツはビジネス用、あるいはフォーマル用に作られており、それ以外での着用を想定していない事が多い為ではないかと考えています。
嘗てVAN等のアイビー全盛の頃は学生がスーツ或いは紺ブレザー+スラックスを着る事が「粋」とされていたし、バブルの頃は学生であってもコンパやディスコ、クラブにはブランド系スーツが良いと言われていました。(バブル時代の着こなしが洗練されているとは言えませんが…。)
今日のメンズファッションは多様化により「こうあるべき」というルールの意味が薄れ、個人の裁量で色々な着こなしを楽しむ事ができる時代です。そこで、カジュアルな着こなしに向いているスーツについて書いていきます。
2.カジュアルな着こなしに適したスーツ
スーツ程メンズファッションアイテムの中で「ウンチク」の多い服は無いのではないでしょうか?
昨今レプリカジーンズやミリタリージャケット云々で色々なウンチクが語られていますが、実際にはスーツに比べると足元にも及びません。
googleで検索して頂けると分かりますが、インターネットで調べるだけでもかなり多くの「オーダーメイドスーツ」の会社やショップを目にします。それだけ「紳士服=スーツ」が男性社会に根付いているということです。
※ここではそんな「紳士服=スーツ」についての詳細には触れません。そういった情報はオーダーメイドをしているショップのサイトや書籍などで広く公開されていますので、そちらを参考にして下さい。
さて、皆さんもよく目にする「ビジネススーツ」はこういうものだと思います。
左から「シングル2つボタン」「シングル3つボタン」「ダブル」です。
これらにカジュアルな着こなしに向いているスーツはあるでしょうか?
答えはNOです。
こんな感じのスーツとぼくは考えています。ポイントは下記の要素を押さえているものとなります。※左の写真は過去のGUCCIのスーツです。
①作りは基本的にスーツの構造、素材を踏襲
②全体的にスリムなシルエット
③カジュアルジャケットのように羽織れる上着
④ジーンズのような感覚で履けるパンツ
だからジャケットは「シングル2or3つボタン」パンツは「ノータック」がカジュアルには向いています。また、ジャケットはピークド・ラペル、斜めフラップポケット等シャープなディティールを取り入れていると、一層カジュアルウェアとして扱いやすくなります。
こういうスーツは上下合わせてスーツとして着る他、生地によっては別々に着ることもできるものです。
3.スーツのシルエットの違い
では上で書いた「カジュアルに向いているスーツ」とそうでないスーツの違いをシルエットの面から噛み砕いて説明しましょう。
まず、前提として言えるのは「細めでミニマルな形」である事です。
スーツは上下共同じ生地を使用しているので、他の着こなしに比べ「画一的」になりやすいものです。そんな中でゆったりめのシルエットとなると生地の露出面積が広くなるので、より一層「ありがちなビジネスコーディネート」っぽくなります。
逆に細めでコンパクトなシルエットにする事によって、必要以上のスーツの主張を抑える上、ボディライン全体のシャープさも演出され、着る人をより引き立たせる事ができるという訳です。
左の図は「A:ビジネススーツ」と「B:カジュアル向きスーツ」の違いを示したものです。
ここで上着、パンツ各々でのポイントを紹介します。
(1)上着
ビジネススーツでは「ややゆったりめ、着丈長め」のものが今だに主流です。着丈が必要以上に長くないものを選びましょう。
また、ジャケットは「肩幅」「身幅(左図の矢印。脇の下の幅のこと)」が全体のシルエットのポイントとなるので、必ずジャストサイズのものを選びましょう。ウエストシェイプのポイントはやや高めのほうがシャープさが増し、脚長効果も少々期待できます。
ボタンの2つ、3つはVゾーンの深さと関係しますが、好みで選びましょう。
(2)パンツ
ノータックである事は言うまでもありませんが、大きなポイントは「股上が浅めである事」と「細めのストレートシルエットである事」です。
全般的にビジネススーツのパンツは股上が深めなものが多いのですが、股上が深いとどうしてもカジュアルシーンには合わせにくくなります。
日頃ジーンズを履きなれている人には股上が浅めなパンツのほうがしっくり馴染むと思いますし、腰周りのシルエットがシャープになります。
また、脚部の太さですが、ジーンズやチノパンと比べ華奢な生地のスーツパンツの場合、ジーンズ程タイトフィットにすると生地や縫い目に負担が掛かり過ぎて破損しやすくなりますが、程よくスリムなシルエットのほうが全体のシルエットが綺麗に見えます。
大雑把な内容で、実際には着る人の体型にも大きく依存する事なので詳しく「この寸法が良い」とは言えませんが、イメージは伝わるものと思います。