4.ビジネススーツとカジュアル向きスーツの比較
ここでは実際に私が持っているスーツで両者の比較をしてみます。左は「ビジネススーツ」、右は「カジュアルシーンでも着やすいスーツ」です。色は左がネイビーのストライプ、右はほぼ黒に近いダークグレーの無地です。決して左のスーツが安物や粗悪品という訳ではありませんが(どちらも定価6万円の国産のスーツです)「これだけ違うものなんだ」というのが伝わると思います。
(1)ジャケット
別々に撮影したものですが、ほぼ同じ縮尺の写真です。
ほぼ同じサイズのものですが、見てもお分かりだと思いますが、左の方が全体的に大きめに見えると思います。
特に着丈の違いは良く分かると思います。
※右のジャケットは比較的BOXシルエットに見えますが、全体的にかなり細めです。
(2)パンツ
こちらもジャケット同様ほぼ同じ縮尺ですが、違いは一目瞭然です。
同じスーツパンツでも「これでもか」と言う程シルエットが異なります。
左のものは2タック股上深め、ジーンズで言うところの「バギーパンツ」、右は股上の浅いLevi's505といったところでしょうか?右のパンツの裾幅は19mmで、スキニージーンズより少々太め。
こちらは写真では分かりにくいと思いますが、右のパンツはおおよそ501並の股上の浅さでノータックのすっきりシルエットです。
対して左側のパンツは深々とタックが入ったゆったりシルエットです。
5.生地、色について
まずは生地の素材について。
ビジネス用スーツの素材は「100%ウール」又はウール主体の混毛が基本ですが、カジュアルシーン向けでは他にも綿100%や化繊主体のものもあります。
素材としてはもちろんウール100%が最も高級なのですが、カジュアルウェアとして着る場合、ウール100%にこだわらずに自分の好みで選んでも構わないと思います。最近ではポリウレタン混毛でストレッチ機能を持たせた動きやすいスーツもあり、カジュアル向きとしてはオススメです。
綿製品では、セットアップすればスーツになるジャケットとパンツが販売されている場合も多いので、スーツを着なれない人はこういったものを別々に買うのも良いでしょう。上下合わせてスーツとして着る事もできるし、各々のアイテムを別の服と合わせて着る事も簡単です。
次に色ですが、先記の「ミニマル」「主張しすぎない」という点からも、1着目のオススメは「黒、ダークグレー系」です。この手の無彩色は非常に懐が深く、コーディネートがしやすいので便利なものです。特に上のスーツのように「ほぼ黒に近いダークグレー(濃い目のチャコールグレーですね)」はビジネスでも冠婚葬祭でも使え、カジュアルでも行ける万能なスーツです。
ビジネス用では「紺、グレー」がベーシックとされていますが、紺はカジュアルなコーディネートの場合、以外と癖がでる色なので、カジュアルで着るのはスーツ自体を着慣れてからでも遅くはありません。
また、柄についても基本は無地が向いています。柄入りの場合もピンストライプなど目立たない柄に留めておいたほうが扱いやすいでしょう。
6.さいごに
元々メンズのスーツはカジュアルウェアと比較して非常に細かいサイズ管理がなされており、紳士服の中で最もシルエットやサイズに対して厳格な、スタイリッシュな服です。しかしながら日本では「仕事用に着る制服」的な扱いをされることが多く、プライベートな時間では敬遠されがちです。
本来の紳士服の歴史を考えればカジュアルファッションの考え方をスーツに取り入れるというのは順番として逆なのですが、今の日本は「カジュアルファッション=お洒落、スーツ=ダサい仕事着」という感覚があまりにも強く根付いている為、このような記事を書きました。
最近は某社の「モテスリムスーツ」などのように、ビジネススーツでもここで紹介しているような「細身のシルエット、シングルブレスト、ノータック」のスーツが主流となってます。デザイナーズブランド系ショップで販売しているスーツは内容を網羅しているものも少なくありませんし、昨今では「ザ スーツ カンパニー(THE SUIT COMPANY)」や「PSFA(パーフェクトスーツファクトリー)」など比較的安価なスーツ専門店でもこのようなスリムフィットのスーツが売られ、手軽に入手できるようになりました。
その為、ON/OFF兼用としてスーツを購入することもできる機会が増えています。
せっかく高いお金を出して買うスーツなので、様々なシーンで活躍できるスタイリッシュなスーツを買うほうが良いと思います。スーツは難易度の高い服ですが、しっかりと着こなせれば「本当にスタイリッシュになる」服ですので、機会がありましたら是非チャレンジをしてみて下さい。
また、ここで紹介している内容を「テーラードジャケットとトラウザーパンツの組み合わせの紹介」と解釈すると、ジャケット+パンツスタイルの着こなしの参考にする事もできます。